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□■□■□ 【七緒のスチャラカ★介護日記】
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□■□■□──────────────── 2008.5.28 ── Vol.0067 ──

       左半身マヒとなった父ヨシオ。母ヤスコと長女・七緒が自宅での
       介護を決意した!お気楽3人家族の、手探り介護マガジンです。
──CONTENTS────────────────────────────
       ●スチャラカ日記 『リハビリ冷戦時代』
       ●今日の母ヤスコ
       ●編集後記
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□■□■□………… 『リハビリ冷戦時代』 5月28日 …………□■□■□

 実のところ、この数年来、私と父ヨシオはリハビリ冷戦時代にある。
読者の皆さんはご存じのように、以前は様々なバトルを繰り広げながらも、それ
なりにストレッチをしたり、筋力をつけるトレーニングをしたりしていた。

 当初は私も随分と気負って、「私が厳しくやらせないと、悪くなる一方なんだ
から!」と思っていた。自分からは全く何もしようとしない父に、なだめたりす
かしたり怒鳴り合ったりして、それでもなんとかかんとか自宅でリハビリの時
間を作っていたんだ。

比較的機嫌良く取りかかる日もあれば、てこでも動かずに頑としてリハビリ拒否
することもあり、お互いに「やらなくちゃいけない」とわかっていながらも、そ
れを実行することがものすごく負担になっていた。

「さ〜、リハビリの時間だよ〜」と始めてから、スイスイこなせば30分で終わる
メニューなのに、
「うるさい!もうやらないったらやらないんだ!」
「誰のためなのよ!歩けなくなってもいいの!?」などと罵り合っているだけで、
1〜2時間経過してしまい、ぐったりしてしまう事もしばしば。
 
 その内に、私にもデザインの仕事を下さる有り難いお客様も増えてきて、仕事に
費やす時間も出掛けることも多くなってきたけど、それでも「リハビリさせない
と!」と思い、なんとか時間を作って父と対決していた。
 
 そんな苦労も、父の身体に効果となって現れれば苦労とも思わないのに、
「忙しいなら、俺のことなんか放っておけ!リハビリなんか嫌いだ!」などと言わ
れると、許されることなら思い切り殴りつけたい気持ちになったよ。
せっかく作った時間を、こんなくだらない言い争いで無駄にする父に、本当に腹が
立つ。

 そうしてある日、「まったく、またお父さんがリハビリ嫌がって…」と言う話を
弟に愚痴ったところ、彼が言った。
「もういいんじゃない?しばらく放っておけば。オヤジの身体のことなんだし。
本人がそんなに嫌なら、もうしょうがないよ。お互いに、嫌な思いしないようにす
ればいいよ」

 その言葉は、ちょっとショックだった。

 誰のためのリハビリなのよ!父のためなのはもちろんだけど、父がもっと弱って
寝たきりになったら、家族が苦労するんでしょ?その日がなるべく来ないよう、な
るべく元気でいられるようにリハビリさせる以外ないのに、その人ごとみたいな
言い草は何?

 弟にすれば、別にそんなことまで考えての発言では無かったかもしれない。
ただ単に、「そんな無理強いしたってしょうがない」という気持ちだったのかな、
と思う。
 
 しかし、私の『リハビリさせねば強迫観念』はス〜ッと消えて、
「そっか。別にいいんだ、それでも。父自身の身体なんだから、それ程嫌ならもう
関わるのはや〜めたっと!」という気持ちになった。
 
 こんなに大変な思いをしてやらせようとしたところで、結局は父の身体なんだし、
関節が固くなろうが歩けなくなろうが、私は痛くも痒くも無い。
それで寝たきりになったらもっと大変になるのは家族だけど、私ひとりのせいじゃ
ないんだし、なんとかなるでしょうよ。もう知るもんか!

 それからは、敢えてリハビリの時間を設けて、ベッドの上でストレッチしたり、
筋トレのようなことをするのはすっぱり止めた。

 そして両親に宣言した。
「こないだ、ヤス(弟)に言われたからって訳じゃないけど、もうリハビリの面倒
は見ませんから。せっかく時間作っても、本人にやる気がないんじゃ無駄だし。
 これだけ頑張ってやってきたのに、それでもやりたくないって言うんだから、
もっともっと身体が悪くなって寝たきりになっても、それはお父さんのせいです
からね、私は面倒見ませんから。即、病院送りにするからね、そのつもりで!」

 もちろん、もっと状態の悪いお年寄りが沢山入居待ちの施設に、すんなり入れ
る訳はないし、よっぽど悪くないと長期入院もさせてもらえないだろう。そんな
ことは百も承知で言ってるんじゃ!

 母は困った顔をしていた。すまん、母よ!しかしもう私も限界だ。
父はそっぽを向いて黙っていた。もちろん素直に謝って「心を入れ替えるから、また
一緒にがんばろう」などとは口が裂けても言わない父だ。

 しかし本当に放っておいたら、歩くことまでしなくなりそうなので、家の中の歩行
訓練だけは声を掛けている。主に食事の後、洗面所に歯磨きに行く前に、10メー
トルにも満たないスペースだけど、何往復か歩くことが訓練だ。

 それすらも、ちょっと目を離すとやめてしまい、「何回歩いたの?」と訊いても、
適当にサバ読んだことしか言わない。2往復しかしていないのを知っているけど、
わざと訊くと「5往復したよ」などと平気で言うのが図々しいったら!
以前、リハビリ病院で歩いていたことを考えれば、20往復しても足りないと思
うが。

 まあそれでも、何回か歩けばいいけど、それすらも嫌がって動かない時もあり、これ
じゃあ本当に歩けなくなる日も近いな、とマジで思う。

 本人は「そうやって何回と決められるのが、俺は嫌いなんだ!」と言う。その気持ち
はわからないでもないけど、それじゃあ何も言わずに見守っていれば、本人が自主
的にどんどんやるかと言えば、決してそんなことはしない。誰も何も言わないのを
これ幸いと、ちゃっかり座っている。

 私ももうあれこれ言いたくは無いけど、あまりにひどい態度だと言ってやるんだ。
「あ〜あ、またそれですか。歩けなくなるよ、確実に。人ごとじゃないよ、お父さんの
ことだよ。寝たきりになるんだよ、遠い未来じゃないよ、かなり近い将来だよ。
わかってる?この調子じゃあと数年…一年後かもね?半年かも?」
 
 父、むくれてそっぽを向く。自分から目をそむけても無駄さ。

「自分で歩いたりリハビリするのを拒否して、寝たきりになるんだから、しょうがないよ
ね。これだけ言っても聞かないんだから、私はもう知らないよ。
 寝たきりになったら、どこへも行けないし、美味しい物もお酒もダメだろうね。それで
もいいんでしょ?
 お母さんも、お父さんのオムツなんか替えるの嫌だって言ってるし、どうすんの?
エッコ(七緒の妹)にやってもらう?それとも嫁さんにオムツ替えてもらいたい?いいか
もね、彼女たちなら、私と違って優しくしてくれるかもね〜」

 我ながら、よくぞここまで意地悪を言えると感心する。きっと言葉の暴力だと思うけ
ど、あまりの理不尽さに言わずにいられない。
 
 だってそうでしょ?父が病気で左半身マヒになったのは、しょうがないことで、そんな
ことを責めたことは無いよ。
 今思えば少しずつ予兆はあったけど、ある日突然脳梗塞になり自分の身体が動か
なくなったことは、想像以上にとてもショックで悲しいことだと思うし、家族としては
残念でたまらない。
 
 けれど、起きてしまったことは紛れもない現実で、認めたくない気持ちを殺して、
受け入れて生きていくしかないじゃないの?

 その後のリハビリが辛いのもわかる。誰でも痛いことや辛いことはしたくない。
わかるけど、いつまでも現実から目をそむけていても、何も良い方向へは進んで
いかない。一家の長らしく誇りを持って、元気で強かった父ヨシオらしく前向きに
歩んで欲しいと、娘としてそれだけを心から願っている。

 それなのに、この情けない有様。リハビリというのは、父本人がやらないことには、誰
にもどうしようもないのに。私が筋トレしたり歩くことで父の筋力がアップするなら、い
くらでもやってやるつ〜の。それをやろうとしないのは、父の責任以外の何物でも無
いと私は思う。

 「さあさあ、誰にオムツしてもらうの?エッコ?嫁さん?それとも若くて可愛いナースが
いいの?」

 さすがにここまで言われると父は、「うるさい!いい加減にしろ!」と叫び、嫌々立ち上
がってちょっと歩いたりする。だから始めっからそうやって歩けっつ〜の!と、心の中で
毒づくが、甚だ気分悪し。
 
 そこまで言わせる頑なな父の態度に心底腹が立つけど、そこまで言われる父もちょっと
可哀想な気もする。そこまで意地悪言う自分にも嫌気がさすし、でも言わないで見ぬ
振りをしていては自分のストレスが溜まる。なによりも、ますます父が歩くことさえしな
くなる…。

 あ〜あ〜、ストレッチしないから足がむくんでるよ。関節も固くなってるんだろうな、と
思うこともあるけど、もう知らないよアタシャ。

 そんなこの頃のヨシオファミリーのリハビリ冷戦が、ちょっと違った曲面を迎えた。
この惨状を見かねたケアマネージャーが、最近訪問リハを始めたS病院と話をして、
理学療法士の先生に来てもらうことを勧めてくれたのだ。

 以前にも訪問リハの先生に来てもらっていたことはあるが、父がリハに力を入れている
デイに通い始めたし、病院側の都合もあって、久しく途絶えていた。
(結局、リハ重視のデイサービスはタバコ問題で大揉めに揉めた末、行かなくなってし
まったけどね〜)

 「女性の先生ですよ」というケアマネの言葉のせいだけではないけど、リハビリに煮詰
まっているのを自覚していた父ヨシオも承諾、数年ぶりに週1回の訪問リハをお願いす
ることになった。

 そして初めてH先生が、ヨシオ家に登場した時は、正直びっくらこいた。
なんと若い!美人!そして穏やかな方である。以前Iリハビリ病院で担当していただいた
A先生も美人だったが、父ヨシオはそういう面ではとてもラッキーで、世の男性諸氏に
申し訳ないくらいだ。
 
 それからと言うもの、父は火曜日になると身だしなみを整え、H先生が来るのを心待ちに
している。まさに童話の『北風と太陽』状態。ガミガミ言うだけの北風娘には心を閉ざして
いた父が、太陽の女神のようなH先生とは嬉々としてリハビリに励んでいるというわけ。

 しかし、そう簡単に、リハビリ好きになるわけもなく、H先生の居ない時には
「ほら、またさぼってる。何回歩いたの?もう少しがんばろうよ」に逆戻り。
「うるさい!俺はもういいんだ!もう終わりだ!」
「ふ〜ん、随分態度違うね。そうやってH先生にも言えば?俺はもうお終いだから来なくてい
いってさ」
 またもや嫌々ながら歩き始める父。なんだかなぁ。

 後日、ケアマネと母との会話。
「どうですか、ヨシオさんは。訪問リハ頑張っていますか?」
「H先生が来てる時は一生懸命やってるけど、普段はあんまり…」
「やっぱりね〜。どこもそんな感じですよね。でも、僕は先にH先生にお会いした時に、
『この先生なら、ヨシオさんリハビリ頑張ってくれるかも!』って思ったんですよ」
「あら〜Sさん、さすがにうちのお父さんの事、わかってるわね!」

 こんな風に書くと、ちょっとセクハラっぽいと言うか、女性だから美人だから鼻の下を
伸ばして、喜んでいるだけだと誤解されてしまいますかね?
 もちろん、H先生は麗しいルックスだけでなく、熱心に仕事に取り組んでくださいます。
チャラチャラしたところが見受けられない、とても真面目で良い先生なのです。  
 
 何かをする際には、あらゆる意味で、劣る人よりは優れた性質を持つ人と一緒でありたいと
思うのは、誰にでも生まれるごく自然な感情だと思う。別にH先生のことだけに限らず、な
にかをきっかけに父がやる気を出してくれるなら、それは変な意味ではなく、純粋に本当に
有り難いことだと思う。

 もしも訪問リハに来てくださるのが、他の先生だったとしても、熱心に取り組んでくれること
に変わりないと思うし、以前のように男性の先生でも、それなりに友情のような絆を築いて
いける力を、父は備えているのです。
 
 だから決して不純な気持ちだけでがんばっている訳ではないと言いたいけど、やっぱり父
も男、むくつけき男性よりも麗しい女性の方が、よりやる気も湧いてくるってものでしょう。

 このガミガミ娘も、少しは優しく、大陽作戦を見習ってみればいいんだけど、毎日一緒にいる
と、そうそう甘い顔ばかりしていられないのよね〜。
 これも仕事だ、理不尽なお客さんだと思って接すればいいかな、と考えてみることもあるけ
ど、だからってお金貰えるわけじゃないし〜、などと現実に戻る。

 たまには柔和作戦してみても、また理不尽なわがままで嫌な気分になり、やっぱり知らん顔す
れば良かったと後悔したり。それは敵(父!)とて同じ気持ちだと思うけど、一緒に住んでいる
以上仕方ないことだと諦める。
 こうあって欲しい、と願うのは私の勝手な思いで、他人を自分の思い通りにすることなんて、
できるわけないんだから。

 なんだかんだバトルしながらも、父ヨシオの介護生活ももうじき丸8年。その後大きな病気も
せず、入院もせずに現状維持できてることは、本当に有り難いことだと思う。
 
 色々と言いたいことはあるだろうけど、ぐっと我慢して(しないことも多々あるけど)頑張って
来た父ヨシオ自身の努力の結果だよね。できればもうちょっとだけ頑張ってみて欲しい、とは
望みすぎなのかも。

 と、今はしみじみしてるけど、また明日の朝はなんらかのバトルが勃発するかもしれないね。
 「このわがままオヤジ!顔も見たくないわ!」と思う日もあれば、風邪を引かないか心配する
夜もあり、それが家族ってものだよね、きっと。
 毎日がそんなことの繰り返し、それがヨシオファミリーの介護生活なのです。

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■□■…………………………… 今日の母ヤスコ …………………………■□■

 ある日、親戚の家に父と二人で遊びに行った母ヤスコ。訪問先で車を停めてビックリ。
「あら、車椅子を玄関先に置いてきちゃった!」
 「ほらお父さん、気を付けて!ハンカチ持った?」なんて出掛けにバタバタしている間に、
忘れてしまったらしい。親戚宅では車椅子無しでも過ごせたらしいから良かったけど。
 その場に居なかった私に「いつもはアンタが車椅子をトランクに積んでくれるから、つい忘れ
ちゃったのよ」と、母は言い訳しておりました。
「車椅子だけ積んで、お父さんを忘れたんじゃなくて良かったね」などと冗談言って笑ったけど、
玄関先にポツンと置きっぱなしの車椅子、だれかに盗まれなくて本当に幸いでしたわ。

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■□■…………………………… 編 集 後 記 …………………………■□■

 ああ〜、書いちゃったよ。自分の鬼娘発言、老人虐待ですかね?ちょっと反省。
今回の介護日記を読むと、毎日ものすごく大荒れの一家のように思えるかもしれませんが、
リハビリ問題と野菜嫌い問題以外はそれほど険悪になることもなく、
まあまあ楽しく日々過ごしていますので、ご心配なく。

●今日の格言 『カメラマンを責めても、自分の二重顎は隠せないと思うよ』

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