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□■□■□ 【七緒のスチャラカ★介護日記】
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□■□■□──────────────── 2003.09.02 ── Vol.0054 ──

       左半身マヒとなった父ヨシオ。母ヤスコと長女・七緒が自宅での
       介護を決意した!お気楽3人家族の、手探り介護マガジンです。
──CONTENTS──────────────────────────────
       ●スチャラカ日記 『たまには陰湿に』
       ●今日の母ヤスコ
       ●編集後記
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□■□……… スチャラカ日記 『たまには陰湿に』 9月2日 ………□■□
 
 ただ今、父ヨシオとケンカ中。しかも、珍しく陰湿に。

 きっかけは、ついさっきのこと。
今日は母ヤスコが、所用で昼から出掛けるというので、私がお昼ご飯の支度をし
ていた。とは言っても、菓子パンとお茶、トマトという簡単メニューだけど。

 「お父さん、支度できたよ〜」と声を掛けると、隣の居間でテレビを見ていた
父は、よっこらしょとベンツ(父所有の車椅子の愛称)から立ち上がり、杖をつ
いてダイニングキッチンまで歩いてくる。

 ベンツでも普通の椅子でも、ずっと座りっぱなしの父は、動かない方の左肘が
痛くなるらしく、椅子の肘当ての上に、パウダービーズの柔らかいクッションを
当てている。

 キッチンの椅子に、これまたよっこらしょ、と座ったのはいいが、浅く腰掛け
たので、肘が肘掛けにまで届いていない。ビーズクッションを肘の下に当てよう
と待ち構えていた私が、「もうちょっと深く座りなよ」と言っただけなのに、
「これ以上はできないんだよ!!」と、いきなり怒鳴る父。

 それも普通に、これこれこういう理由で不可能だ、と説明してくれれば、こち
らも納得するが、今時の幼稚園生でもそんな駄々っ子は、いまい。
 「お尻をちょっと持ち上げて、深く座り直すだけなのに、できないの?」と言
うと、黙ってやってみる。ちゃんと深く座れるし、肘の下にクッションも当てら
れた。

 「まったく、いつも肘が痛いって言うから、ケアしてあげようと思ってるのに、
どうして怒鳴られなきゃいけないのよ…」と、ブツブツ言いながらお茶を入れて
いると、もう父はムシャムシャ食べ始めている。

 思わず叫ぶ。「ちょっと〜!まだこっちは支度してるのに、いただきますも言
わずに、なんで勝手に食べちゃってんのよ〜〜」
 すると父ヨシオ、負けずに「いちいちうるさいんだよ!!ああでもないこうで
もないって!」

 はあ〜。もう頭に来た。自分では何もせずに、何もかも人にやらせておいて、
その態度ですかい。随分とお偉いお殿様になったもんだ。

 まだお出掛けの支度をしていた母ヤスコが、何事かと心配していたが、説明す
るのも腹立たしい。そのまま押し黙り、もくもくと食事をする。
 母が出掛けた後も、父はテレビのニュースを見ながら、事件に文句を言ったり、
加害者をののしったりしていたが、私は一切無視で、無言。

 父を歯磨きに行かせた後、食器を洗う。そろそろ歯磨きも終わって、自分で部
屋に戻るだろうと、様子を見に行くと、トイレに立っている。いつもなら、ブ
ザーをならして誰かを呼び、手を借りるところだが、ひとりで用を足している。
 うんうん、いいんじゃない。意地でも私の手を借りたくないなら、自分ででき
ることも増えるだろうし。これは『突き放しリハビリ』って言うのかな?

 などと思って見ていると、用を足し終わって、ズボンもなんとか上げた今頃に
なって、ブーブーとブザーを鳴らす。
 「なあに?終わったんでしょ?」「ベンツに座るんだ」「すぐそこにあるじゃ
ん」「動いちゃ危ないだろ!」トイレの脇にある車椅子を見ると、ブレーキがか
かってない状態だった。

 「自分で立つ前に、ブレーキかけりゃいいじゃん!」と、心の中で思いつつ、
ブレーキをかけ、座りやすい位置に向けてあげる。しかし、なんでここでまた怒
鳴るのか?納得がいかない。こりゃ宣戦布告だ。

「あのさぁ、もう余計なことは、一切しないようにするから」
「また!ああ言えばこう言う!!」
「ほら、また怒鳴るでしょ?為を思ってやってるのに、いちいち怒鳴られたん
じゃ、割が合わないよ。だから、もう余計なことはしないし、言わないから、
自分のことは自分で、したいようにやってね」

 父は憮然としたまま何も言わず、ベンツをバックさせて部屋へ戻る。うまく
バックできずにドアに当たり、唸っている。ようやくドアを通過するも、今度は
テレビ台にぶつかり、いまいましそうにテレビ台を突き放す。その弾みで、4点
杖が倒れてベンツの下敷きになり、父、爆発寸前!
 
 杖をなんとか引っ張り出し、渾身の力で振り上げて、どこかへぶん投げようと
したが、そのまま降ろして、置いた。狭い部屋で振り回しても、自分の持ち物を
壊すだけだと気付いたのか、もしくは口うるさい娘に向かって、投げつけたい衝
動を、やっと堪えたのかもしれなかった。それをわかっていながら、冷めた目で
その様子を見ている私は、なんて意地悪でイヤな娘なんでしょう。

 「私ちょっと、そこのポストまで行って来るから」と言って、家を出る。
 父が「おう」と、小さな声で言ったのが、ようやく聞こえた。

 あ〜あ。面倒臭いな、もう!なにもかも面倒だ。
 歩きながら考える。このまま、父のことも母のことも、家のことも仕事のこと
も、なにもかも放り出して、ずんずんずんずん歩いて行ったら、どうなるんだろ
う。なにもかも忘れて、ずんずんずんずん。

 今までこんなこと、考えたことって、無かった。何かトラブルや滅入ることが
あっても、前向きにやっつけるのが自分らしいやり方だと、ずっとそう思って対
処してきた。でも、自分だけがやっきになってがんばっても、どうにもならない
ことが、世の中にはあることも、最近わかってきた。その辺の折り合いを付ける
ことが、大人になるってことかしら?なんちゃって。

 それはともかく、時間が許せば100円ショップへ行って、あれこれ買い込み、
ストレス発散したいところだ。(安上がりでいいでしょ?)しかし今日は、急ぎ
の仕事の連絡が入るので、外でフラフラしているわけにも行かないし。
 郵便物をポストへ落とすと、仕方なく家に帰り、今これを書いている次第。

 確かに父ヨシオの言うように、いちいちうるさく言い過ぎかもしれない。なに
もかも先回りして手を出さずに、父本人があれこれ努力してみて、その上で助け
を求めてきたら、一緒に解決する……とか?うん、それは理想だね。実際にはそ
んな余裕、時間的にも心理的にもありゃあしないんだけどね。

 まあとにかくこの3年間、なんとかやってきて、今は生活もかなり落ち着いて
いるし、父の身体も絶好調。ありがたいことです。
 でもそれが当たり前になってお互いに、悪い意味での甘えが出て、しょうもな
いことでぶつかる事が、多くなってる気がするんだ。

 暑さのせいか遊び疲れのせいか、いつものパワーが無い今日の私なので、たま
には陰湿に、このケンカを見守りたいと思います。だんまり作戦に、私が自分で
耐えきれなくなるか、母ヤスコが仲裁するか、それとも自然消滅するか。一体ど
うなるのかはわかりませんが、次回の介護日記までには終わってると思うので、
そうしたらご報告しますね〜。
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■□■…………………………… 今日の母ヤスコ …………………………■□■
 
 多分ヨシオ家には初めての、アボカド。エビと和えてサラダにとかなんとか、
料理の本に載っていたらしく、母ヤスコが買ってきた。私は外で食べるが。
 「結構皮が固いのね」「中も固いとガリガリで、おいしくないよ」「あら、
そうなの」と、しばらく熟すまで待っているつもりだったが、エビの方はとっと
と他の料理に使われてしまった。
 数日後、お寿司の出前をとった夜。なぜかサイコロ型に切っただけのアボカド
も、テーブルに載っている。
 「ええっ?なんで今日、アボカドなの?」「もう柔らかくなり過ぎちゃうと
思って」「だって、お寿司なのに?」「あら、トロに似てるんじゃないの?」

 そりゃ似てるけど。トロの無い時に食べるから、いいんじゃないのかな〜?
もしくはトロと和えたりも、するけどさ。なにもお寿司と一緒に出さなくても。
 しかも今回は何かと和えたりはせず、ただレモン汁をかけただけ。父などは
一口食べただけで、後は手を付けなかった。きっとこの後、ヨシオ家の食卓にア
ボカドが上がる日は、来ないと思う。
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■□■…………………………… 編 集 後 記 …………………………■□■

 短い夏が終わった…と思っていたら、残暑がキビシー!!徐々に暑くなって、
徐々に涼しくなって欲しいものです。21世紀になったら、それくらいの気象コ
ントロールが、できるものだと信じてましたよ、あたしゃ。それどころかここの
ところ、世界的に異常気象のオンパレード。コワイことですわ。

●今日の格言 『今年の冷夏で、七緒のビール消費量も伸びませんでした』
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