□■□■□───────────────────────────────
■□■□■  
□■□■□ 【七緒のスチャラカ★介護日記】
■□■□■  
□■□■□──────────────── 2003.03.25 ── Vol.0043 ──

       左半身マヒとなった父ヨシオ。母ヤスコと長女・七緒が自宅での
       介護を決意した!お気楽3人家族の、手探り介護マガジンです。
──CONTENTS──────────────────────────────
       ●スチャラカ日記 『突然嫌になった病』
       ●今日の母ヤスコ
       ●編集後記
────────────────────────────────────
□■□…… スチャラカ日記 『突然嫌になった病』 3月22日 ……□■□

 なんの兆候もなく、突然嫌気がさし、テコでも動かなくなる父ヨシオ。
それが『突然嫌になった病』だ。

 この病気は大抵、リハビリ訓練の途中に発病する。
後になってよく話を聞いたり、状況を思い出して推測すれば、原因がわかること
もあるのだが、発病時は本当にわけがわからないので、とても困惑してしまう。

 今の今まで、リハビリ室を調子よく歩いていて、「じゃあ、一休みしたらもう
1周ね」と、車椅子(愛称ベンツ)に座った途端、発病。
「もう今日は終わりだ。帰るぞ!!」
「は?今日はまだ1周しか歩いていないよ?時間もまだまだたっぷりあるし」
「もういいったら!やめたやめた!!」
「なによ〜急に。わけわからん。はい、気を取り直して、もう1周行こう!」
「うるさい!もう嫌なんだったら!!」

 こうなると、もう手に負えない。子供のダダよりタチが悪い。
あの手この手で、脅したり励ましたりするが、丸い顔をますます膨らませたまま、
動こうとはしない。

 その内、騒ぎを聞きつけた担当の先生が、声を掛けてくれる。

「どうしました〜?調子よく歩いてたのに…」
「なんか、急に『もうやめる』って、動かないんですよ〜」

それまでの仏頂面から、急に甘え顔になる父ヨシオ。
「先生、あのね、腰が(もしくは膝が)痛くて…」
「ああ、今日は寒いですからね〜」などと先生は言いつつ、ちょっと腰を伸ばし
てあげたり、膝をさすったり。
「どうですか?楽になったでしょ?さ、がんばって!」

 先生の理学療法士としての技は、もちろんあると思うけど、『美人の優しい笑
顔』成分が、父には即効性ワクチンとして、効いてると思う。いや、マジで。
 
 と、まあ、こんな感じで父の『突然嫌になった病』は、いつでもどこででも発
病するのだ。

 その日の発病は、なかなか凄まじかった。

 いつものように、リハビリ室で歩行訓練を始めた。部屋の片隅に、登り降りを
練習するための、小さな階段の設備がある。
「お父さん、後だと疲れちゃうから、先に階段やろうか」「ああ」
そうして、階段まで歩いていくと、向こうから他の女性患者が登ってくるのが見
えた。「あら、先客だよ。そんじゃ、1周歩いてから、やろう」「……。」

 なにしろ皆リハビリで階段に取り組んでいるので、一段一段登り降りに時間が
かかるのだ。健常者は普段、階段など何とも思わないが、父ヨシオにとっては、
決死の覚悟を要する。

 そしてリハビリ室を1周歩いた後、階段に到着。
 父の場合、左がマヒなので、登りは右脚から。手すりにしがみつき、頼りない
左脚で踏ん張りつつ、右脚を上の段に持ち上げる。たったこれだけの動作だが、
できるようになるまで、父はかなりがんばってきた。

 5段ほどを登り切ると、今度は7段ほどの降りが待っている。
登りとは逆に、左脚から降ろす。下が見えて怖いので、腰が引けてなんとも情け
ない体勢になるが、本人は必死。私は後ろから、ズボンのウエストを持ち、父の
お尻を膝で支えてあげる。そうすると安定して、降りやすいみたい。

 あと2段のところまで降りてきて、急に父の動きが止まった。
「何?どうしたの?」
「もう嫌だ。階段なんてクソ食らえだ!」
「ちょっと何言ってんのよ。危ないから、降りちゃおうよ」
「嫌だったら!もう動きたくない!!」

 母ヤスコも、下から心配そうに見上げている。
「お父さん、本当に危ないわよ!早く降りちゃいなさいよ!」
「うるさい!」
まったく、何でこんな階段の途中で、こんなことになるのか。馬鹿馬鹿しくて、
後ろから突き落としてやろうかと思うが、そういう訳にもいかない。

「嫌だも何も、あと2段だよ。降りないと危ないって!」
「知るか!もう嫌だ!!」
「ほら、左脚降ろして!」
父ももう自分でもなにがなんだか、にっちもさっちも行かなくなっていて、腰が
ますます引けたまま、ほとんど手すりにぶらさがっている状態。
 私が後ろから支えて、何とか一歩ずつ降ろそうとするが、父はわめいているだ
けで、脚はちっとも動かない。

「ほら〜!自分で降りなきゃ、降りられないんだよ!あと2段、がんばってよ」
「嫌だったら!男の先生におんぶしてもらう!」
「何言ってんの。こんな重い人、先生だっておぶえないよ〜」
「うるさい!コンチクショウ!!」

 あまりのエキサイトに、ちょっとお下品になる父ヨシオ。

「ちょっと、もうしょうがないから、一度ここに座りなよ」と、階段の途中に座
らせる。あとたった2段なのに、もう5分の間、ここで騒いでいるヨシオファミ
リー。嫌になるのは、こっちだよ〜。

 母ヤスコはと言えば、なんだかクスクス笑っている。
「な〜に?何がおかしいのさ?」この修羅場に、呑気だよこの人は。
「あんたがお父さんを後ろから支えてるの、こっちから見てると、腹話術みたい
よ!なんだっけ、ほら、いっこく堂!!そっくり〜!」

 あたしゃ人形遣いか!?こんな可愛くない人形、嫌だっつーの。
母の絶妙なおとぼけっぷりに、父も思わず苦笑い。少し落ち着いたようだ。

 「まったく、何だっつーのよ、お父さん。膝が痛くなった?」
素直にうなずく父ヨシオ。だったら、そう言えばいいのにさ。
「さっき、階段やろうと思った時に、他のババアに取られたから、やる気が削が
れたんだ。あのババア、やっつけてやる!!」はあ〜?意味がわかりません。

 「あのさ、さっきからお父さんがここで止まっちゃって、階段を独占してるか
ら、他の何人ものやる気を削いでると思うんだけど?」
「本当よね〜。さ、気を取り直してあと2段、降りちゃおうよ、お父さん!」

 その後、すんなり脚は動き、無事に降りきることができた。
 
 帰りの車で、またも母ヤスコは大笑いしている。
 「あの時、本当に可笑しかったわ〜。まわりの患者さん達も先生方も、みんな
見てたわよ。まったく、お父さんには困ったもんね〜」
 父はもうすっかり、何事も無かったかのように、済ましている。無事に降りら
れたから良かったけど、あんな階段の途中で大騒ぎしてて、怪我でもしたら大変
だったぜ。まったく人騒がせな『突然嫌になった病』だよ。

 どこか痛いなら、どうしてそう言わないのか?嫌だ!もうやめだ!!と、怒
鳴ってばかりじゃ、こっちだってわかんないつーの。そういう所が、お馬鹿に
なっちゃって、自分でもよくわからないのだろうか?やれやれ。

 父ヨシオ人形を必死で操ったお陰で、翌日、私はしっかり筋肉痛になりました
とさ。不条理な腹話術は、もう懲り懲りです。
────────────────────────────────────

■□■…………………………… 今日の母ヤスコ …………………………■□■
 
 花をこよなく愛する母ヤスコ。蕾を付けた君子蘭に、心を砕いている。
 今日は暖かいからと、鉢を外へ出したり、今夜は冷えるからと、また部屋の中
へ入れてみたり。ふと見ると、君子蘭の鉢はかなり大きく、恐ろしく重そうだ。
 「ギックリ腰になったら、大変だよ。私がやるよ」と、持ったはいいが、予想
より遙かに重くて、ヨロヨロしてしまった。

「これじゃ、私がギックリするよ!もう外に出しっぱなしで、良し!!」そう決
めたのに、「なんか今日は寒いわね〜。君子蘭、枯れないかしら?でも、梅や桜
は外でがんばってるもんね。きっと大丈夫ね。あら、やっぱり冷えるわ…」
と、ブツブツ言っている。あ〜、もう!やりゃいいんでしょ、私がやりゃあ!
 私の腰の安全のためにも、早く暖かくなって欲しいもんです。
────────────────────────────────────

■□■…………………………… 編 集 後 記 …………………………■□■

 先週は多忙のため、発行を延期してしまい、申し訳ありませんでした。締め切
りのある、因果な商売でございます。どうか広い心で、お許しを〜!
 部屋にくだらない物が溢れ、今までのベッドがへたったこともあり、ロフト風
のハイベッドを購入。ベッド下のスペースに、かなりの物が置ける〜と、喜んで
いたところ、知人の一言。「入れ物を作るから、物が更に増えるんだよ」
がーーーん!!その通りでございますう〜。もう何も買いません!!と、言いつ
つ、100円均一であれこれ9個買って、お大臣気分。安物買いの銭失い〜!

●今日の格言 『このシャツ395円だったの。翌週には195円になってた』
==============================================================
【本誌では、みなさんのご意見、ご感想、何でも大募集中!!】
 Mail to:nanao@abox9.so-net.ne.jp
==============================================================
■登録/解除の方法
【七緒のスチャラカ★介護日記】は、下記よりいつでも登録/解除可能です。
 http://www004.upp.so-net.ne.jp/nanao-77/
==============================================================
■このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
 発行しています。http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000084318)
==============================================================
■発行者:七 緒 nanao@abox9.so-net.ne.jp
         http://www004.upp.so-net.ne.jp/nanao-77/
■Copyright(C) nanao 2003.
 【七緒のスチャラカ★介護日記】は、転載・複写大歓迎ですが、できればご一
  報くださいね。
==============================================================